2014年8月26日火曜日

健康&美を左右する腸は第二の脳

ストレス時代、腸の病気が急増中。朝、出勤途中に何度も電車を降りてトイレにかけ込まなくてはならない人や、会議中に腹痛で何度もトイレに行きたくなる人も増えています。これは、過敏性腸症候群といって、満員電車や仕事のストレスが腸を緊張させて起こる症状。腸が緊張して便が早く通過するために起きる下痢と、腸が激しく収縮するために便の通りを阻害して起きる便秘を繰り返すのが特徴です。

このように、腸は精神的ストレスによっても反応するきわめて繊細な消化器官です。ストレスやイライラがあると、自律神経のアンバランスから腸管神経への指令部分が過剰反応の状態になって、腸が異常な運動を起こすわけです。毎朝のことではなくても、たとえば旅行先で便秘になる人も多いはず。
楽しいはずの旅行ですが、心身は意外に緊張しているために起きるストレス性の便秘〈脳で感じるより先に腸が反応する。それが、腸は第2の脳と呼ばれる所以なのです。

消化器の長さは口から肛門まで9~10m。小腸は十二指腸、空腸、回腸に区分されていて6~7m。続いて盲腸、結腸、直腸などの大腸へとつながっていきます。食べたものは、24~72時間かけて消化、吸収、排泄されていくわけですから、長族だと思いませんか? 食べたものの栄養素は、各消化器官で吸収しやすい大きさに分解されて、大部分は小腸で吸収され、体に必要な物質が生成されていく(代謝) わけです。それでは食べたものは、実際に口からどのように肛門までたどりつくのか、およそ10mの長旅をたどってみましょう。まず食べ物は口に入ります。ここからすでに消化の旋はスタートしています。

食べ物を噛み始めると、唾液が分泌されます。唾液には糖質を分解する酵素が含まれていて、噛み砕かれて細かくなった食べ物と混ざります。ご飯をよく噛んでいると甘さを感じるようになるのはこのため。唾液には抗菌作用や発ガン性物質を排除する酵素も含まれているので、よく噛んで唾液をたっぷり出すことが健康の第一歩。

また、生活習慣病の元凶となったりシミやシするカタラーゼやSOD酵素なども含まれています。
たとえばごぼうのように不溶性の食物繊維が豊富な食べ物を噛めば、それだけ唾液の分泌が促されこれらの酵素の分泌量も増加します。胃が疲れているときをのぞいて、日ごろからきっちりと歯ごたえのある食べ物をしっかりよく噛んで食べることが大切なのはこのためです。1日の胃酸の分泌量は約リットルといわれますが、忙しくて食事時問が不規則になると、それがストレスとなってて濃い胃酸が分泌されてしまうことも。

濃い胃酸は胃の壁を傷つけるので、心して3食きちんと食べるよう努力しましょう。こうして飲み込まれた食べ物は食道を通過して胃に入ります。食べ物をキャッチした胃では、さっそく胃液が分泌され、胃の運動によって胃液と食べ物が混ざります。胃はちょうどミキサーのような働きをしているのです。胃液にはタンパク質分解酵素のペプシン、塩酸、胃壁を守る粘液などが含まれています。塩酸はカルシウムを水溶性にして小腸での吸収を助けたり、細菌の繁殖を防ぐ働きをします。そして胃に食べ物が入ったことがわかると、反射的に腸が動き始め、消化吸収の準備をととのえます。胃の内容物はまず十二指腸で迎えられます。十二指腸の入り口には幽門弁と呼ばれる器官があり、内容物がきちんと中和されてアルカリ性になっている場合み開いて、少量ずつ受け入れるのです。十二指腸は小さな器官ですが、ここですい臓からのすい液、胆のうからの胆汁が分泌され、すい液は糖質、脂質、タンパク質を分解し、胆汁は脂肪の乳化を行い、吸収されやすくします。*十二指腸でさらに分解、乳化された内容物はいよいよその先へ向かいます。

小腸全体の長さは5〜6 m。〝小さな腸″ とは名ばかりで、消化吸収の役目を果たす粘膜の絨毛部分を広げると、テニスコート一面分にも及ぶ巨大消化器官なのです。この小腸で栄養素の大部分が分解、吸収されます。絨毛の表面には栄養を吸収する吸収上皮が、根元には消化液(腸液)を出す分泌腺があり、ぜん動運動により、かきまわされ、消化、吸収されます。吸収された栄養素は、毛細血管やリンパ管を介して静脈1心臓1全身に運ばれます。小腸で吸収し残した水分とミネラルを吸収するのが大腸です。ここには、400〜500種類、100兆個、重さにして約1也にも及ぶ腸内細菌のほとんどがすみついていて、食物繊維などの未消化物を発酵させ、分解し、排泄しやすいよう常に活動しています。腸内細菌についてはパート2で詳述しますが、400〜500種ほどの腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分けることができます。
  1. 口食べ物を噛み始めると唾液が分泌される。唾液には糖質を分解する酵素が含まれ、抗菌作用や発ガン性物質を消去する機能も。
  2. 胃食べ物をドロドロにするミキサーの働き。胃液にはタンパク質分解酵素のペプシン、塩酸、粘液などが含まれ、細菌の繁殖を防ぐ。
  3. 小腸腸夜が分泌され、栄養素の80%が分解、吸収される。吸収された栄養素は、毛細血管やリンパ管を介して静脈→心臓→ 全身に。
  4. 大腸小腸で吸収し残した水分とミネラルを吸収。腸内細菌が、食物繊維などの未消化物を発酵させ、分解。排泄しやすいよう活動。
  5. 肛門内肛門括約筋は便意を感じると緩むしくみ。外肛門括約筋をを意識的に緩め、おなかに力を入れて排便が完了する。
ビフィズス菌に代表される善玉菌が、腸内発酵を進め、病原菌を退治し、人体に有益な物質を生成します。一方、悪玉菌は腸内腐敗を進め、有害な物質を生成します。日和見菌はふだんおとなしくしているのですが、悪玉菌が増えてくると悪玉菌の味方をし始めるものもあります。

消化が進み、小腸までの問にほぼ液状となつていた消化物は、大腸の上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸とぜん動運動で順に進むうちに水分が吸収され、健康な状態なら、半株り状になっていきます。下行結腸からS状結腸付近にためられ、ある程度たまったら直腸へと移動します。直腸に便が入ると、内壁が圧迫され、それが信号となって脊髄神経を通り、脳へ伝わり便意をもよおします。
そして肛門から排便。肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋が備わっていて、内肛門括約筋は便意を感じると意識とは関係なく自然と凄みます。外肛門括約筋は、意識的に緩み、おなかに力を入れて排便が完了します。外肛門括約筋で排便をコントロールできるのですが、自律神経系が排便の信号を送っているのに、いっもがまんばかりしていると、神経がマヒして、重症の便秘に陥ってしまうことがあるので、注意しましょう。さて、体内の消化吸収の長旅はこうして終わります。けれど幕を閉じる前に、おみやげが便として残っているので、要チェック。腸内に100兆個もすみついている腸内細菌。

人によってその分布のしかたは千差万別といわれていますが、あなたの腸の中はいったいどうなっているのか気になるところではありませんか? これは、便をチェックすることでその様子がよくわかります。便はとても大切な健康のバロメーターなので、パート8で詳しく述べます。優に関しても個人差はありますが、黄褐色や黄土色の明るい色の便がバナナ2本分ほどというのが健康な便の目安。善玉菌がしっかり活躍している証拠です。一方、悪玉菌がはびこってくると、色が濃くなり、においもきつくなります。和式トイレから洋式に変化して、便をしみじみ観察する人が減っているといわれていますが、もしも日々、健康で美しくありたいと願うならば、トイレタイムをもっと大切したいものです。ここまで述べてきたように、腸はびっくりするほど周到に食べ物を消化吸収し、私たちの健康を維持していることがわかりました。

とくに大腸は100兆個もの常在菌の力を借りて、発酵という技術を用いながら、みごとに未消化物を分解し、スムーズな排泄へとつなげていきます。その満巧なメカニズムも、腸が第2の脳といわれる所以なのです。

忘れてならないのは、腸も神経を持っているということ。さまざまな肉体的、精神的ストレスによって、便秘や下痢のほか、潰瘍やポリープなどの病気を引き起こすことがあります。腸に影響を及ぼすストレスの大きな要因として、食生活の変化があげられます。従来の日本型食生活からタンパク質や油脂分の多い欧米食へと変化し、その変化に追いつかない体は、知らず知らずのうちにストレスを受けます。
また、多忙な現代人の生活に合わせて、24時間いつでも食べ物が手に入る状況。それはとても便利なのですが、1日3食規則正しく食べてきた人間にとって、四六時中食べ物を口にしたり、欠食したりすることは、大きなストレスになるのです。

大腸ガンは着実に増えており、最近では、大腸粘膜が赤くただれ浮腫を生じる潰瘍性大腸炎や、口から肛門までできものができるクローン病といった、決定的な治療法がまだわからない慢性的な病気も目につくようになってきています。また、ジャンクフードやファーストフードばかりに頼る食生活を続けたり、食物繊維の足りない食事が続けば、腸はたちまち悪玉菌の巣窟になり、免疫力が弱まり、体調を悪くすることにもつながります。私たちは、この大切な消化器官にもっと関心を持ち、毎日の生活に気配りしながら、上手につきあっていくことが大切なのではないでしょうか。腸をきれいに保つことは、心身ともに健康な美しさを手に入れる近道でもあるのですから。


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