腸の中には400~500種の細菌が常にすみつき、その数は100兆個、重さにするとおよそ1kgにものぼることは説明したとおりです。
この細菌たちのほとんどは大腸にすんでいて、生体に対して免疫を高めるなど、よい作用を行う善玉菌と、ガンの原因ともなる腐敗物質を出す悪玉菌、そのときの状況で悪玉菌に変化することもある日和見菌などがあります。
それぞれの菌は同じ種類のものがかたまりになって活動していることが多く、抑制したり、けん制したりしながら、腸内で共生しています。
その様子がお花畑に似ているので、腸内の菌の分布を「腸内フローラ(腸内菌叢)」と呼びます。
善玉菌が優勢の「腸内フローラ」であれば、健康が維持され、心身ともに快適で、悪玉菌がはびこると体調が悪くなるという状態が生まれるのです。腸内フローラは長寿と無縁ではないさまざまな菌の分布図、腸内フローラは動物の種類によっても違うし、人間同士の問でも個人差が大きく、顔の造作と同じようにひとりひとりに特徴があります。
新生児が母親の産道を通るときにさまざまな菌が口から体内に入り、その際に、どんな菌がすみつきやすいかが決まるともいわれています。
個人差があり、そのうえに加齢や食事、ストレス、薬(抗生物質) の服用などによっても絶えず変化している腸内フローラ。もっとも大きな変化は加齢によるもので、善玉菌は出生直後に急激に増えて優性となり、離乳期までにいったん安定しますが、成長期を経て老年期に至るころには逆転現象が起こってきます。
善玉菌の代表のビフィズス菌は、乳糖とオリゴ糖をエサに繁殖し、乳糖を乳酸と酢酸に分解し、腸内を酸性にして有害菌の繁殖を抑える働きをします。ある調査では、長寿村のお年寄り(平均82.1歳) の腸内フローラは、都内の老人ホームのお年寄り(平均78歳) よりビフィズス菌が12% 多く、ウェルシュ菌が34% 少ないという結果が出ています。
長寿と腸内フローラは無縁ではないということがわかります。長寿ばかりではなく、はつらつとした若い体でいるための鍵が腸内フローラにあるといえるのです。
若々しい肌を保つための基礎化粧品やメイク用品が話題の昨今。でも、腸がきれいでなければ、いくら上等な化粧品を表面に塗っても徒労に終わってしまうでしょう。
体の中からきれいにして、はりのある肌をつくつておかなくては、輝くような美肌はのぞめないのです。腸のコンディションが悪くて悪玉菌が増えてくると、肌はどのように影響を受けるのでしょう。
まず、悪玉菌の増加で腸内に有害物質が生成されます。それが腸管から吸収されると、肝臓がフル回転で解毒しようとします。すると、肝臓の負担が増えるために全身の代謝が低下してしまうのです。肌は真皮で細胞分裂を繰り返しながら、4週間で絶えず新しい皮膚に生まれ変わっています。
代謝が低下している状態では、肌の生まれ変わりのサイクルが停滞し、古い角質化した肌が残ってしまうのです。そのためにくすみの目立つ肌になり、部分的にカサついたり、吹き出物も出てきます。
また悪玉菌が増えるということは、善玉菌が減ること。これまで善玉菌に代表されるビフィズス菌が行ってきたビタミンB群やビタミンKの合成能力が低下することも肌には打撃です。
とくにビタミンB2やB6、パントテン酸が不足すると、皮膚や粘膜が敏感になり、口内炎、口角炎などができやすく、肌荒れや髪の毛の傷みなどをまねきます。ナイアシンの不足は皮膚のトラブルを助長します。
院内感染で死者が出るなど、近年、免疫力の低下が取り沙汰されています。生活環境があまりに清潔になったために、バイ菌や寄生虫まで排除した結果、それらと共生することのなくなった人間は、いつしか免疫機能を弱めてしまったといわれています。
この免疫機能の要衝でもあるのが腸だと知っていましたか? 腸管リンパ装置をはじめとして、免疫細胞のなんと30% が集まっていて、病原菌などの外敵と栄養素などの有益なものを判別しながら、受諾作用と腸壁にバリアをつくって外敵が侵入しないように防護する排除作用を繰り返しているのです。この精妙な免疫システムも、腸内フローラのバランスが崩れ、悪玉菌がはびこってくると、うまく機能しなくなってきます。すると食中毒やインフルエンザ、結核などの感染症をまねいたり、ガンやC型肝炎などの深刻な病気の一因となったりするわけです。
また、近年増えてきたアレルギー症状と密接に問わっているのもこの腸の免疫システムです。食習慣の欧米化で、肉食が増え、タンパク質を多く摂るようになったために、小腸までの間に十分に分解・吸収されないままに大腸に送られてくる「異種タンパク質」。これが悪玉菌によって傷ついた粘膜に進入しようとします。
それを防ごうと免疫機能が活性化するのですが、その際、ある免疫機能が過剰反応を起こして、全身の粘膜に広がってしまいます。
そしてタンパク質がいずれかの粘膜に触れるとばっと反応を起こす、それがアレルギー反応なのです。このアレルギー反応を抑制する鍵を握っているのが乳酸菌といわれています。乳酸菌の細胞壁に含まれるリボ多糖体という成分が、別の免疫細胞を活性化して過剰反応している免疫システムを抑制します。
スーパーなどの食品売り場にズラリ並ぶヨーグルト製品。そのパッケージには「プロパイオオテクス」という文字がちらほら見えます。少し耳慣れないこの言菜、いったいどんな意味なのでしょうか。
これは「体に好影響を与える生菌や生菌を含む食品」のこと。つまり、腸内の善玉菌を増やす生きた乳酸菌やビフィズス菌などのことです。
「プロパイオオテクス」はアンチバイオテックス(抗生物質) と対極にある言葉です。抗生物質は善玉菌も殺してしまいますが、プロパイオテックスは、生きた乳酸菌などを摂取することで善玉菌を増やし、腸内微生物のバランスを改善するのです。この定義にあてはまるものとして注目を集めているのが、特定の菌や菌株で作られた高機能ヨーグルトですが、日本古来の食べ物のみそ、しょうゆ、ぬか漬けなども立派な「プロパイオオテクス」といえます「プロパイオオテクス」のほかに、
「プレバイオテックス」という言葉も目にします。これは、腸内(結腸) の有用菌の増殖を助け、宿主に有益に働く難消化食品、つまり、腸内のビフィズス菌や乳酸菌の増殖や活性を高めるもの。オリゴ糖や食物繊維などがこの定義にあてはまります。オリゴ糖はみそ、しょうゆ、玉ねぎ、ごぼう、はちみつなどに含まれています。もう1つ覚えておきたいのが「バイオジェニクス」。これは生体の機能をよくすることによって腸管の働きをよくし、腸内細菌のバランスをよくするもの。カテキンや善玉菌の死骸などがこれにあたります。
かつては、乳酸菌は胃酸や胆汁液で死滅してしまうといわれていました。けれど、最近は、胃酸に強く、生きたまま大腸に届く強力な菌で作られた高機能ヨーグルトも多くなりました。
健康に役立つ機能性と安全性が厚生労働省から認められて「特定保健用食品」に指定されているヨーグルトもあります。これら、手軽なプロパイオテックスとしてのヨーグルトは、菌が生きたまま腸内にたどりついて、フローラをつくり腸壁を守る働きは同じですが、ヨーグルトごとに菌種、菌株が異なります。
先に腸内フローラは個人によっても異なるといいましたが、個人ごとに合う菌種、菌株も存在します。しばらく続けて便通がよくなるなど、体に合ったものを見つけてください。また、ヨーグルトを3日間食べないと、腸内フローラが変わるという結果も出ています。
食べ続けることも大切なので、飽きずに食べられるようにフルーツを加えたり、生のままサラダなどの料理に使うなど、いろいろな工夫をすることも必要になってきます。
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